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   「 ベース・カルチャー:
         レゲエ〜ジャマイカン・ミュージック 」

ロイド・ブラッドリー著、高橋瑞穂訳
2007年 シンコーミュージック・エンターテイメント    


ジャマイカのポピュラー音楽はどのように生まれ、育ったか


 今日ご紹介するロイド・ブラッドリーの 『 ベース・カルチャー 』 は、レゲエ関連書の中では “ 日本で初めて出た部類の本 ” である。 本書は1950年代から'80年代までのジャマイカ音楽を、その時代背景といっしょにまとめたもの。 大まかにその流れや背景を知っているからと言ってあなどるなかれ。 必ずいくつかは「へぇ〜そうだったんだ!」と思うことが書かれているはずである。
 まず印象的なのは、筆者の語り口のうまさ。 ジャマイカ音楽ファンの心をくすぐるエピソードをたくさん交えながら愛情を持って語るので、自然に引き込まれてページをめくる手が止まらない。 たとえばコクソン・ドッドがダウンビートのテーマソングとして7年も使っていたキラーチューン(ウィリス・ジャクソンの「レイター・フォー・ザ・ゲイター」。もちろん曲名はバレないようレーベルをはがしている)をライバルのデューク・リードに入手されたとき失神寸前になった話は、 当時のサウンド競争がどんなに白熱していたかを顕著に表している。 またダブ(スペシャル)は、元々シンガー志望のアーティストがじぶんでダブを1枚切り、それをアメリカ産のレコードを思うように変えない小さなサウンドに売り歩いていたという話もなかなか興味深い。 ジャマイカの音楽がどのようにしてイギリスで流通し始めたのか。 著者がイギリス人なので、もっとイギリスのシーンが詳しく語られてもいいかな?という気もしたが、トロージャンがポップ・レゲエ/再発レーベルになっていく様子や、 イギリスでもジャマイカ産至上主義的なことがあったことを読むと、時代の流れを感じる。 なお本書では、マトゥンビとスティール・パルス、ラバーズ・ロックに関しても少しページがさかれている。 ボブ・マーリーを美化していないダニー・シムズのインタビューもおもしろい。
 ジャマイカのポピュラー録音音楽がどのように生まれてきたのか。 またそれがどんな風に国境を越えていったのかにふれた本は海外にもあまりないと思うので、この辺りの記述は貴重だ。 名曲の生まれた時代背景や、どんなことを歌っているのかも簡潔に書かれているので、曲の内容を知りたい人には重宝する。
 何に関しても言えるが、歴史はすべて語り手によって若干の違いがある。 だから「この話はこれまで聞いたのと違う!」と言う前に、いろんな本を読んで、いろんな人の話を聞いてじぶんで歴史を理解するのが一番いい。 今回邦訳された 『 ベース・カルチャー 』 は、訳者がジャマイカ音楽に精通しているので、一面的な考察が避けられている点も大きい。詳しい注釈もついている。 なおこの本は音楽としてのダンスホールに否定的過ぎると感じる読者もいるようだが、ダンスホールに関しては別の本を読めばいい。 そんな些細なことで、この本の生き生きとしたダンスホール(場所)や録音音楽黎明期の素晴らしい記述が損なわれるわけではない。
 ジャマイカの音楽は移り変わりが早い。ダンスホールだけをみても、何週間かコンシャスな曲が増えたと感じていると、ハードコアなエッチ物に流れたり、バッドマン・チューンが続く。 そしていろんな音楽が幅をきかせたり狭めたりしているのがジャマイカの音楽だと思う。 たしかに著者の言うように、R&Bやジャズからスカ〜ロックステディ〜レゲエのような音楽的な変化は、ダンスホールの時代に入って落ち着いている。 しかし「どんなところでジャマイカのポピュラー音楽が生まれ、育ってきたのか」ということを知れば、今のダンスホールを理解するのにも役立つ。 この本が日本語で読めるのは、とても貴重。 やっと日本でこういう本が出た。  


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2008年2月3日 森本幸代

 
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