去る9月3日に行われた総選挙で、約18年振りにJLP(ジャマイカ労働党)が与党に返り咲いた。
9月11日に新しくジャマイカの総理大臣になるのは、ブルース・ゴールディング。
過去の様々なスキャンダルや問題発言、その性格の弱さ、怪しさなど数々のマイナス要素がありながらも、“ゴールディングの”選挙戦は素晴らしかった。
ずっと彼に不審な目を向けていたわたしも、選挙戦前後のゴールディングのスピーチ、特に党首討論会は見事だったと認めざるをえない。
かつてのイメージ一新である。
今回の選挙戦は、「今ジャマイカには変化が必要。 Jamaica needs a change now.」と訴えるJLPと、「このまま発展を続ける。 Not changing course.」というPNPの戦いになった。
「変えるか、変えないか」
そしてジャマイカ国民の出した答えが、「ジャマイカを変える」だった。
PNPが18年以上連続で政権を握ってきて、そろそろ変化が必要なときだったのかもしれない。
ジャマイカ初の女性総理大臣、PNPのポーシャ・シンプソン・ミラーは、低所得者層のエリア出身ということで、着任当初から“貧しい者の見方”という姿勢を強く打ち出してきた。
それがだんだんと女性新風の先駆者のように言われ始め、いつの間にか“みんなの母”に。
しかしそれから次々と与党内の不正が発覚し、苦しさが増すにつれ、ただ叫ぶ総理大臣のイメージがついてしまう。
その後は破れかぶれ? なぜかいきなり予言がどうの、迷信がどうのという話まで飛び出して、なんだかあやふやな人になってしまった。
しかしこれまでのジャマイカであれば、個性の強い彼女がゴリ押しで再び政権を握ることが可能であったかもしれない。
過去の総理大臣を見てみても、シンプソン・ミラーが自分のことをジャマイカ国民の“母”だと自称するように、アレクサンダー・バスタマンテ、エドワード・シアガのような貧しい者の父親的存在の人が熱い支持を集めてきたという歴史がある。
このような姿勢がパトロンークライアント・ポリティックス( “ 自分の ” 支持者の生活を融通する政治)、果てはギャリソン・ポリティックス( “ 自分の ” 支持者層を守るための要塞コミュニティー作り)につながるのだが、
「この人が政権を握れば、自分達のために何か融通してくれる。自分達の生活をよくしてくれる」と思わせる力は、ずっとジャマイカの有権者にとって重要な判断材料になっていた。
つまりゴリ押しでも「わたしに任せなさい!」的な荒々しいまでの力が、ジャマイカの選挙に大きく影響していたのである。
片やJLPのブルース・ゴールディングは、ずっと怪しげなイメージが抜けない政治家だった。
改革派と称して’95年に当時党首だったエドワード・シアガと決別し、新政党ナショナル・デモクラティック・ムーヴメント(NDM)を設立。
それが2002年の総選挙の時、わずか数週間前にJLPに戻り(その直前からJLPの影で動き始めていた)、今度はシアガの後釜争いでも大もめにもめる。
その後JLPの党首になった後は、PNPのあら捜しと暴露・暴言の連続。
たしかに彼が汚職スキャンダルを起こしたことはないが、過去を振り返れば相当のいざこざを引き起こしてきた。
一時はそのイメージとポーシャ(シンプソン・ミラー)人気で、JLPの先行きは暗いと思われたところ、今年の選挙直前によく練られたマニフェストと党首討論会でイメージを一新。
特に有権者の6割が見た/聞いたといわれる討論会では、新総理大臣にふさわしい器量を見せ付けたのではないだろうか。
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