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 この8月11日に行われた党首討論会は、ユーチューブなどで見ることができるので、ジャマイカに興味のある方にはぜひお勧めしたいものの一つ。 各メディアの代表者が普段から気になっていたことをほぼ網羅して聞いてくれているので、これまでの問題に対する両者の見解や、今後の方針が非常にわかりやすく語られている。  ただキャラクターで押すシンプソン・ミラーは、叫ばないよう自分を抑えて討論に参加。 きっちりとジャマイカの現状把握や今後の方針を練ってきたゴールディングとの違いが明確に現れ、あの討論がPNPにとって不利に働いたという感はある。 しかしシンプソン・ミラーも 「ママにまかせなさい」 の一言で国を引っ張っていけないことを痛感したのではないだろうか。 現政府は数ヶ月前から18歳以下の子供の医療費を無料にしているが、そのお金をどこから持ってきたのか?という質問に対し、「予算からです。あったから使ったんです」という答えになっていない返答をしたシンプソン・ミラー。 しかしゴールディングは「過去二年間利息が下がり、そのため約500億円のお金が浮いた。その一部を使ったんです。ちなみにクリケットのワールドカップ開催で使った180億円も、そこから出しました」 と返答。 この受け答えからもわかるように、シンプソン・ミラーは終始あいまい。それが現状を具体的に把握していないという印象を与えた。 そして、シンプソン・ミラーの選挙区は何も変わっていないが、それについてどう思うか?という質問に対し、彼女は「選挙区の教育に重点を注いでいるから変化が見えにくいだけ。住宅や健康・福祉施設、スポーツ・プログラムにも使った。わたしほどあの選挙区に力を注げる人は、今後も現れないでしょう。わたしはずっと選挙区の人を愛しているし、みんなもわたしのことをずっと支持し、愛してくれている」という答え。 これは「選挙区の代表が当選した暁には、“その地区に”金銭的にも重点的な恩恵を返す」という悪しきジャマイカ社会の慣習を、自ら認める形になってしまった。 それに対しゴールディングは、「あなたのことを移り気な政治家 flip-flop と言う人もいますが、それについてどう思われますか?」という鋭い質問にも、「忠誠心の問題だと思います。その忠誠心を何に注ぐか。自分の信念に対してか、それとも党に対してか。わたしは自分の忠誠心に素直であっただけです」と返答。 思わず軽い拍手や笑いまで呼んでしまう余裕があった。 たしかにシンプソン・ミラーの言うように、政治家が意見の対立にあったり、厳しい状況に立たされたとき、それに耐えるタフさは必要。 しかしゴリ押しのタフさや、その政治家の神秘性・キャラクターよりも、有権者が変化を望んだ結果が今回の選挙結果に表れたのではないだろうか。



 もうジャマイカの国民は、すでに政治家に劇的変化を期待していない。 父や母のような政治家に夢を抱いて忠誠を誓うのは、徐々に遺産になりつつある。 まだ「討論は聞いたけど関係ない。俺は生まれた時からJLPサポーターなんだ」とか「わたしはPNPサポーターとして生まれた。だからPNPサポーターとして死ぬ」という老若男女の言葉も聞かれる。(参考:グリーナー社「Jamaica Election 2007」のブログ)  しかしそういった盲目的な固執が、今の暴力犯罪や政治家の不正を許し、一部の人間だけが得をするようなシステム作りに加担していることに、だんだん国民が気づきつつもある。 PNPとJLP、どちらがマシかという選択がここ20年ほど続いている。 そういった意味で、党内で次々と不正が発覚し、18年間連続して政権をとったPNPのことはわかった。 だから現状をよく把握し、明確でわかりやすいヴィジョンを論理的に示すをゴールディング(JLP)にチャンスをあげてみてはどうか?という流れだったのかもしれない。 「新しいものを導入しつつ、これまでのPNP政権の良いところは引き継ぐ。方針は良いが本末転倒になっているところは軌道修正する(オペレーション・プライド、投資のしくみなど)。今後もPNPと連携してよい国づくりを目指す」という路線も好印象を与えた。  今後は、ゴールディングがどのような内閣を形成するか、どのようにPNPと連携してジャマイカを軌道修正していくか。これが最大の関心だ。 PNPは次の選挙までに党首が交代するかもしれない。
 ジャマイカはこのまま「変わらずにいくか/変えるか」で「変えること」を選んだ。 新政府には、良い変化の起きそうなこの雰囲気を、このまま持続・発展していってほしい。

2007年9月10日 森本幸代

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