ここ最近、ジャマイカでは再びゲイをめぐる論議が熱くなっている。
2月14日、バレンタイン・デーの出来事。セント・アンドリュー、ハーフ・ウェー・チュリーにあるトロピカル・プラザ内の薬局で、ゲイらしき男性3人が約2,000人の暴徒や野次馬に襲われる事件が起こった。襲われた3人はタイトなジーンズとシースルーのシャツを着ており、ある女性から女っぽい行動を指摘されたことに激情。3人の内1人が持っていた液体を彼女にかける。すると彼女は店の外で彼らの行動を近くの人に訴え、それをきっかけに暴動が発生。薬局の店長は暴徒を恐れ、店にかぎをかける。襲われた3人は店の外に出ることもできず、一時騒然となった。呼ばれた警察は催涙ガスを放ってやっと3人を救出。しかしその警察官も3人を救出時、仲裁に入った男性をホモと呼び、拳銃やこぶしで暴行を加えてから警察署に連れて行ったという。途中の車内でも、3人はゲイであるということで中傷を受けたようだ。現場にいたある男性は、 「 あんな連中をどうして助けに来たんだ。あんなヤツはもっとやられるべきだったんだよ 」 と 『 オブザーバー 』 紙のレポーターに語り、別の女性も 「 ゲイだってことが何も起きずにおおっぴらにできるようになったら、ジャマイカもおしまいよ 」 と語っている。
(2007年2月17日 オブザーバー)
別の事件は4月2日モンテゴベイ、ソカ・カーニバルの会場で起きた。盛り上がった男性3人がステージに上がり、男同士で腰をくねらせたことに怒った群集がビンや石を投げつける。
しかし彼らがそれをステージから投げ返したことで、群集はさらに激怒。彼らに襲いかかり、3人はグローセスター通りを逃げることに。命からがら店に逃げこみ、現場に来た警察に保護される。しかし彼らが搬送された病院の外でも、30−40人の群集が待ち構えており、外に出ることができなかったという。
(2007年4月3日 オブザーバー)
4月8日、マンチェスターの教会で葬儀が行われる中、女装をした男性が参列者の怒りを買い、窓が割られ、石やビンを投げつけられるという事件が起きた。
(2007年4月9日 オブザーバー)
4月27日の朝、今度はトレラウニーのファルモウスで女装をした男性が近くの住民らに殴る蹴るの暴行を受ける事件が発生。襲われた男性はバスかタクシーを待っているところだった。どうやら誰かが 「 女装をしている男がいる! 」 と叫んだことで騒ぎに発展したようだ。
『 オブザーバー 』 には襲われる男性が地べたにひれ伏している姿と、そんな彼に殴りかかる女性の写真が掲載されており、事件の生々しさが伝わってくる。もちろん彼がかぶっていたカツラはとれ、化粧ははげ、ハイヒールは脱げて裸足である。
(2007年4月9日 オブザーバー)
これらの事件がこれまでのゲイに対する暴行事件と違うのは、ゲイ(だと思われる男性)がじぶんたちのアイデンティティーを外から見てはっきりとわかるように行動していたということ、非難や暴力に抵抗している点である。4月23日には 『 ウエスタン・ミラー』 紙で 「 ゲイが女性用下着を買い占めている 」 という記事が掲載されたことを受けて、ゲイの男性二人がモンテゴベイにある同社に抗議と説明を求めて乗り込んだこともあった。
(2007年4月24日 オブザーバー)
おそらくジャマイカの文化に少しでも触れたことのある方ならご存知だと思うが、ジャマイカは同性愛者に厳しい国である。特に男性の同性愛者は 「 バティマン 」 「 チチマン 」 「 ソドマイト 」(聖書の中で死海南岸にあったといわれる古代都市「ソドムの住人」という意味。ソドムと隣町のゴモラは住民の悪徳のため天の火で焼き滅ぼされたと言われている)と呼ばれ、その風当たりは女性の同性愛者に対するものよりも強い。法律
(「 Offences Against the Person Act 」 76条、79条)でも公私を問わず男性間の性交が禁じられており、最高10年の禁固刑が科せられる。「ソドムの住人」と呼ばれる同性愛者を、クリスチャンが受容しているわけはなく、男女間の役割がはっきり分けられているラスタからも忌み嫌われる存在。ダンスホールでも同性愛者を嫌う歌詞が盛んに歌われている。同性愛者に対する暴力はあとをたたず、オカマやゲイのレッテルを貼られることは、ときに死をも意味する。
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