ジャマイカに渡ってきた移民シリーズも三回目は、レバノン系移民です。
レバノンは地中海の東端に位置する、岐阜県ほど大きさの国。
北にはシリア、南にはイスラエルやヨルダンがあります。
他のカリブ諸国にも、宗教的迫害を受けたレバノン系移民が移り住み、銀行業などで重要な役割を担っていることは有名です。
(ちなみにジャマイカ音楽のパイオニアの一人、ケン・クーリのお父さんもレバノン人)
文中では「1992年ごろに内戦は終わった」とありますが、今だ民族紛争の絶えぬ地域でもあります。
「ジャマイカにやってきた人々」第三回も、グリナーの「Pieces of the Past」のレバノン系移民の話を日本語でお届けします。
多彩な文化から: ジャマイカに来た人々
レバノン人の到着
レベッカ・トーテロ
レバノンの人たちは19世紀後半、ジャマイカにやってきのが始まりです。
19世紀半ばの中国やインドからの移民とは異なり、年季奉公人制度でジャマイカに来たわけではありません。
むしろ何世紀も前に移住してきたユダヤ人たちと同じく、自由意志で、または宗教的迫害を逃れてジャマイカにやってきたのです。
レバノン人の場合はオスマントルコ帝国下で、イスラム系トルコ人に迫害を受けたキリスト教徒。
当時中東にはマウント・レバノンと呼ばれるシリアの人々が暮らしていました。
それゆえシリア人とレバノン人を混同することが多かったのですが、シリア人とレバノン人は別の地域から出てきた人たちです。
伝え聞くところによると、新世界の道路は金で舗装されているほど栄えているといううわさが流れており、多くの人が自分と家族のために国を去って新しい生活を
望んでいました。
しかしなぜジャマイカだったのか
当時の人々が何故ジャマイカに新天地を求めたのかに関してはいくつかの説があります。
初期レバノン系移民の2世ネリー・アマーは、後アマーの小売商一家で女家長となった人物です。
彼女は1990年代後半に自分が死去する前、親類や家族から様々な情報を聞き集めました。
ジャマイカ・ジャーナルの記事によると、彼女は父親がイギリスを自由の国として夢見、他のレバノン人たちと1860年、'70年代に故郷を後にしたと
書いています。
アメリカはまだ南北戦争の痛手から立ち直ろうとしているときであり、アマー氏の父親によると、とにかくイギリスの国旗を掲げ、
イギリスの保護下にある国ということで、レバノン/シリアの人々はジャマイカを新天地に選んだようです。
そしてその後ジャマイカに移ってきたのは、初期移民の親類/友人で、新しい土地での生活を望んだ人々だったといいます。
これが俗に「鎖型移住(チェイン・ミグレーション)」と言われるもので、新天地での成功話を聞き、移民のルートもあり、血縁や社会関係を通じて到着後の仕事もあるという移民の形です。
他の初期移民の子孫はアマー氏に「中東を出発した船が一番最初に到着したのはジャマイカだったので、特に行き先も決めていなかった祖先たちは
ジャマイカに降り立った」と語っています。
しかし中には「中東を出発してから船はいくつかイタリアの港、フランスのマルセーユを経てキューバに着いたんだ」という人もいます。
彼らはキューバを気に入らなかったのでジャマイカにやって来た、というのです。
加えて、レバノン/シリア人たちが初めてジャマイカのことを知ったのは1891年の万博だったといいます。
その万博は現在ウォルマーズ・スクールのある場所で開かれ、世界中から30万人の人が訪れました。
もちろんその中には中東からの人もいました。
そうしてジャマイカに足を運んだ人が、母国に戻ってジャマイカでの成功の可能性を語り、レバノン人、現在ジャマイカ観光業の父と言われるアベ・イッサの祖先であるパレスチナ人ら、中東からの
移民が乾物商売の成功を夢見てジャマイカに渡ったのです。
1890年代、キングストンの港は栄え、市場にも活気があふれていました。
ジピジャパ帽(ジピジャパと言われるヤシ科の植物を利用して作った帽子)とモーニングコートのレバノン人、腰布を巻いたインド人らが盛んに値段交渉をしていたのです。
きれいに着飾った女性たちが港に降り立ちます。
市外交通の手段として使われていたラバ車の他に、馬を1、2頭つけた馬車も下船客を乗せて走っていました。
馬車は排水溝を飛び越えて走らねばなりませんでしたが、当時はもう電気も飲料用の水道もありました。
町は活気にあふれていたので、行商人として成功するという希望があったことも十分に裏付けられていました。
初期のレバノン/シリア系移民たちはバナナ産業で盛んに活躍していたようですが、20世紀初頭に入ると商売も傾き始め、ほとんどの者が
ユダヤ系ジャマイカ人に続き、売り買いを中心とする小売業に転職しました。
最初は店舗を出す資金を持った者はほとんどいなかったので、皆行商から始めました。
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