HOME   通販トップページ   連絡先   リンク




MIGHTY MULES' BOOKSTORE はジャマイカ関連書の紹介、販売、
出版をするお店です。
みなさまのご感想、ご意見、“文章も”お待ちしております。
>> CONTACT

Google
WWW を検索 MIGHTY MULES' HP内を検索

Love Me, Love Me Not 愛を求めるひとたち @

 
 突然降りだした雨。 ある取材に失敗したわたしは、ジャマイカの山間部にある小さな村で雨宿りをしていた。 道向いにある民家の軒先まで走る気力もなく、赤い花の咲く木の下で晴れ間を待つ。 北からどんどんねずみ色の雲が流れてきている。雨は当分やみそうにない。
今何時だろう・・・。 お腹が空いていた。  でも小さな村ではスナック菓子を売る露店が2件あるだけだ。 乗り合いタクシーが通る道沿いまでも距離があった。



「アンタ、こんなところで何してる」
雨の中歩いてきた村人に声をかけられ、人に会えた安堵感と、人と話する面倒臭さが交錯した。 わたしはぼーっとしたまま自分が取材で来たこと、それに失敗したことを話す。
「アンタ一人か?こんなとこに女一人で危ないじゃないか」
普段なら知らない人と話などしないのだが、自己嫌悪と雨と空腹でやぶれかぶれだったわたしは呆然としたまま返事した。 その人がなれなれしく同じ木の下に入ったり、近づいてこないのも理由のひとつ。 やぶれた服とズボンに身をつつみ、彼は雨に打たれながら道向かいの家に歩いて行く。
「来な」
わたしは何も考えず、ぼーっとしたまま民家のポーチに入った。



ポーチで、彼は充電中の携帯をチェックしている。
「ここはあなたの家?」
「いいや、友達の家」
「人の家で勝手に雨宿りして大丈夫?」
「友達は今仕事に行ってるんだ。いつもこうやって使わせてもらってるからだいじょうぶ」
わたしはポーチにあった椅子に腰掛け、彼は3メートルほど離れた反対側で立っている。 わたしは失敗した取材の経緯を聞かれるままに話した。



「それは災難だったな。アンタは何も知らずにここに来ただけだ。ここは政治にやられてる。 情報にお金なんかいらない。アンタはただ悪いヤツらにつかまっただけさ」
そう言ってこの村が道沿いで一番深いところにある集落であること、 村で唯一の現金収入は外部企業のバナナ農園で働くだけだということ、だからみんな現金がほしくてたまらないことを教えてくれる。 どうやら彼は以前村長選に出馬意思を持っていたが、今の村長ほど根回しすることができず(つまりお金)、みんなも現村長の「外部に頼って村のインフラと現金収入を確保する」という考えに同調したらしい。
「でも、結局潤ってるのは村長とそのまわりの人間だけなんだ。選挙が終わったあとじゃ、どうしようもないけどな」
「だったら、ここに生えてる野菜や果物を売るってのはどう?」 わたしは無知なヨソ者。
「こんな山奥の村まで、誰がモノを買いにくるんだ。ここが道のドン詰まりなんだ。村の人間は、みんな町で買い物をする。だから一部の人間は、外から来る人間からの現金収入を期待してるのさ」



そう言われても、何が変わるわけもなかった。 挫折感と雨に見舞われた不運、空腹感。わたしは返事もあいまいになっていた。 ふと彼はポーチを出て、近くの木になっているオレンジに石をぶつけて落とし、なたで割って半分を持ってくる。
「こうやって食べるんだ」
オレンジの食べ方は知っていたが、黙って受け取り、果汁をすする。



しばらくして雨が小降りになると、その人はバナナの葉を切って持って来た。
「せっかくここまで来たんだ、村を見て帰りな。スターアップルは食べたことあるか?」
スターアップルは食べたことがなかったので、ないと答えると、小雨の中その人は歩き出す。
「来な」



わたしは彼についてバナナの葉のカサをさし、とぼとぼとついていく。
「これは数珠玉。ネックレスなんかに使う」 「これはパキ」 「これは○○」 歩きながらいろんな植物について説明してくれる。 この人はどこに行くんだろうという思いが一瞬頭をよぎったが、ずっと距離を保って話しているところをみると、礼儀を知ってる人だという気もした。 彼は雨の中急斜面を降り、川を渡る。 そして何をするかと思いきや、10メートル以上はある竹を切り出した。 そしてそれを引きずって川を渡り、斜面を上がり、また歩き出す。 この人は一体なにをするつもりなのか。 そう思いながらさらについていくと、スターアップルの木があった。 実はかなり高いところになっている。切り出した竹があっても届きそうにない。 するとその人は「持ってて」と竹を渡し、じぶんはスターアップルの木に登る。 上から手を伸ばしてきたので、まさかと思いながら長い竹を渡す。 やはり、木に登った状態で10メートル以上の竹を使って実を落とすつもりだ。
「アンタ、(実を)受けることできるか?」
「たぶんだいじょうぶ」



それからは二人無言で収穫に集中した。 彼が木に登ったまま竹で実をたたき落とし、わたしが下で受け取る。 二つほど受け取りに失敗して実が割れた。 わたしは近くにあった芋の葉をちぎり、その上に集めたスターアップルをのせた。 8個ぐらいあった。
彼が下におりてくると、実を二つ割ってしまったことを告げる。
「かまわんよ。これ食べてみな。種の周りの果肉だけを食べるんだ」と言って割れた実を分けてくれる。 ゼリーの甘さが、疲れた体にしみこむようだった。 わたしはつい皮についた実にもかぶりつく。
「そんなに皮のほうを食べたらいけない。ほら」
二つ目もわたしはあっという間に平らげた。 山道を歩く間はまわりを見るのと彼についていくのに必死で忘れていたが、じぶんはお腹が空いているんだった。
「アンタ、もう行かないといけないのか?」
「いいや、暗くなる前に町に帰れればいい」
「そしたらうちにヤムがあるから、それでよかったら食うか?ご馳走するよ」



>>次へ

1/2

                     HOME   通販トップページ   連絡先



(c)2002 MIGHTY MULES' BOOKSTORE