ジャマイカには 「レンタラスタ Rent A Rasta」 という言葉がある。いわゆるリゾート・ラバー、ビーチ・ボーイズ。 海外からの “女性” 観光客が、一時の恋を楽しむジャマイカ人ボーイフレンドのこと。
女性の側は 「じぶんの国で恋人をみつけられない、太った、醜い中年女性が多い」 というのが一般のステレオタイプだ。
実際ギョっとするような年配の白人女性を連れて歩くジャマイカ人男性も見かけるが、そう悪くない女性といっしょのレンタラスタもいる。
一節では 「自国ではキャリア・ウーマン/主婦として社会的責任を負った女性が、じぶんの国で遊べないので、リゾート地で羽を伸ばして女に返る」 らしい。
いずれにしても自分の国でできないこと (海 Sea、太陽 Sun、セックス Sex)を提供する、スリーSの観光業がジャマイカにはある。
それではレンタラスタが、男に縁遠い女性たちとなんの見返りもなしにつきあっているかというと、そうではない。
彼らはじぶんの性と引き換えに、金品をもらうことでその関係が成り立っている。
きびしい言い方をすれば男娼。ドキュメンタリー「レンタラスタ」で、「オレはジゴロじゃない。ただ女が好きなだけだ。彼女たちもそのつもりで来ている。ジャマイカ人のビッグ・バンブー(大きなペニス)が目的なのさ」 と顔にモザイクをかけられるでもなく、笑顔で意気揚々と話す男性が出ている。
それでも出会ってすぐに人間性もわからず、どちらかというと魅力的ではない女性たちとつきあうのに抵抗はないのだろうか。きっとセックスという見返りだけでは割に合わないはずだ。セックスできるだけもすごいと思う。 (※ お互いのことを知った上なら見かけがどうかは関係ない。これは即座の、一時の関係だけを見たばあいの話)
そんな愛を提供するレンタラスタは、名前こそ「ラスタ」とついているが、実際はラスタでなくてもよい。
ふつうに考えて、外国人観光客に一時的なセックスとロマンスを提供し、その見返りに金品をもらうというのがラスタのストイックな教義に合っているとは思えない。
しかし頭をドレッドにし、ラスタっぽい男性ほどパトロンをみつけやすいようだ。
「みんなラスタやジャマイカ人男性に幻想を持ってるの。だからその人が貧乏でも、『あぁ、彼はなんてナチュラルな生活をしてるんだろう。これが本来の生活だわ!ドレッドが素敵だわ!』って目がハートマーク」
夫婦でジャマイカに通い続けているという白人女性はバカにしたように言う。
「でも、欧米の人はお金とセックスって割り切ってる人が多いみたいだけど、日本人の中には本気の人が多いみたいよ」
前出のドキュメンタリー「レンタラスタ」でも、「ジャマイカ人が一回ヤったら女はメロメロ。もう『結婚しよう』とか言うんだぜ!」とうれしそうに言う男性がでていた。
「かなり貢いでる人もいるって聞くよ。好きな人がお金に困ってたらほっとけないのはわかるけど、そんなにいつもお金や物ばかりせびられて、愛されてる実感があるのかな?」
「愛されてると思ってるから貢ぐんじゃない?」
別のジャマイカ人女性は「なにを今さら」とでも言いたげに、あきれたように言った。
「でも、じぶんが無理してまでお金つくってるんでしょ? それを相手の人もわかってる。なのにお金をねだるなんて、その人、相手の女の人を愛してないよ」
「愛してないに決まってるじゃないの! お金が目的なんだから。ほかにもそういう金ヅルがいるの。そうやってピンプは生きてんだから。だまされてる外国人を見て、まわりの人はみんなかわいそうだなーって思ってるよ。わかってないのはだまされてる本人だけなんだから」
ピンプ。 わたしはこの言葉を「売春の仲介人」を指す言葉だと思っていたが、「ヒモ (誰かにお金を貢がせて生活している人)」の意味もあったのだ。セックスとお金を引き換えにしている、割り切ったレンタ・ラスタや白人観光客の関係とは違うものが、ジャマイカ人男性と日本人女性の間にある。アメリカのビザ目的で結婚したというテリー・マクミランの元だんなさんのことが頭に浮かんだ。 純粋な(だと思われる)愛を求めているのは、なにも日本人だけではないのか・・・。
「最初はそんなに高額のものをせびられないからわかりずらいの。だんだんその金額が上がっていくのよ。それで買ってもらったプレゼントは、全部彼女が帰るとすぐ売り払って生活の足しにする。それで別のカモをみつけてはだます。ピンプはやさしいからね、みんなそれにだまされるのよ」
「それじゃあ、なんでじぶんの国ではお金のない男の人を相手にしないのに、外国だったらそれがアリなのかな?」
「貧乏さもね、豊かな国から来た人には珍しいの。じっさいは地獄なのにね」
わたしは失礼にも以前出会ったJのことが思い出された。彼の家を見たとき、「これじゃあマトモな女の人は相手にしないだろう」と思ったんだ。彼のような生活をしている人と喜んで付き合うのは、物好きな外国人ぐらいかもしれない。残酷な言い方だが、上昇志向の強いジャマイカ人女性は、少なくとも本気では相手にしないと思った。
「でもそんな人とわざわざ付き合わなくてもいいのに、なんでだろう」
しつこく首をかしげるわたしに、「そりゃー自分の国で彼氏ができなかったらしょうがないんじゃない? お互い様よ」 とジャマイカ人女性は冷たく言い放った。
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