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        「 Man A Yard 」

Bazba Theatrical Players
2006年 DVD   



終わりからはじまる物語


 案外知られていないようなのですが、ジャマイカの演劇は映画よりも盛んで、常に数本の演目が島各地で上演されています。 今日ご紹介する「マナ・ヤード」は、rico art の rico さんに教えて頂いたルーツ・プレイのDVD作品です。



 舞台は1970年代のジャマイカ。 外貨の持ち込みも持ち出しも禁止された厳しい民主社会主義政権下で、ストラグルする人たちの物語。
 肌の色の薄いこどもを授かったスコット婦人は、家族がよりよい暮らしをするカギは、肌の色の薄いこどもが、よりお金持ちで、より階級の高い生活をすることにかかっていると考えている。 娘のアントネットが白いこどもを生んで大喜び。 しかしアントネットは恋人に捨てられ、じぶんといっしょにジャマイカに残ることになってしまった。 息子のロバートは運良く海外に移住することができたが、アントネットのこどもの面倒は見てくれても、じぶんたちに構う余裕はないようだ。 しかたがなくスコット婦人は、肌の色は黒いが、お金を持っているトーマス・ブラックとアントネットの結婚を承諾。 娘夫婦と同居しはじめる。
 トーマスは現実を冷静に見、まじめに働き、将来的なビジョンも備えた仕立て屋。 女に弱いのが珠に傷だが、 「 外国で暮らしたいと思わないの? 」 という妻アントネットにも、「 寒くて、人も冷たい外国に行く気はない 」 とはっきり言っている。 せっかく作った商品を丸ごと盗まれたり、兄弟にだまされたり、たいへんなことだらけなのだが、ジャマイカを離れることなど全く念頭にない。
 一方トーマスの兄ドレッグスは大学出のインテリ。 しかし教職についてもまともな給料は得られず、今はラスタになってガンジャの密売をしている。



 このお話の登場人物はわずか6人なのだが、その男女が文字通り入り混じり、乗り越えるべき課題の連続。 それぞれの歩んできた道のりが劇中で明らかになっていく。
 肌の黒い娘婿を 「 礼儀知らずだ! 無知だ! 」 と言っていた ( 実際はそんなことはない。ただの言いがかり ) 陰気な姑スコット婦人も、じぶんや家族のために肌の色の薄い血を入れたかった背景が浮き彫りにされ、思わずぐっと胸がつまる。 娘のアントネットは、おそらく肌の色が薄かったから銀行勤めができているのだろう。 そして人種差別とは無縁に思えたトーマスも、妻アントネットが自分のこどもを身ごもったと聞いて、思わず喜びのあまり 「 肌の色の薄い女が、オレのこどもを生む!! 」 と歌いだす。 反対にアントネットに白い隠し子がいることを知るや、 「 オレの黒い種が育っているところを、白いこどもが通ってったのか?! 」 と激怒。 肌の色に対するこだわりが、思わず露見する一コマである。
 そしてふらふら何をしているのかわからないトーマスの兄ドレッグスも、 「 自分は自転車から落ちるために、自転車に乗ったようなものだ ( せっかく勉強して大学を出たのに、全く意味がなかった ) 」 と、ジャマイカの社会制度に対する悲しみを語っている。
 最後には頼りないと思われたトーマスが見事一家の長 ( マナ・ヤード )となって、一件落着なのだが、 「 わたしたちは、いろんなことを受け入れなければいけないのね。。。 」 と言われたトーマスが、こう答えている。 「 でも俺たちが、勇気を持って立ち向かっていけば克服できるさ! 」
 人種差別も、社会の矛盾も、人の裏切りや無知も受け入れた上での、 「 終わりからはじまる物語 」 。  これがジャマイカ人の強さなのかもしれない。  

2007年5月30日 森本幸代

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※ 在ジャマイカ日本語教師、T先生による日本語字幕付。すばらしいお仕事です!

 
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