Garfield Ellis 著
2005年
Mcmillan Caribbean
「オレらはこんな風に死ぬのか?」 現実と重ねて読んでしまうフィクション
ひさびさにのめりこむ本だった。
本の舞台は‘70年代のジャマイカ、セントラル・ビレッジ。
こどもの頃の思い出と、大人に成長していく少年の物語で構成されている。
そして少年たちのこども時代は、ほんとうに無邪気でキラキラしている。学校に遅刻して上級生に追いかけられ、逃げてそのままサボり、川に行ったり、サトウキビをこっそり食べたり、怖いのは親に怒られることだけ。
しかし大人になるにつれ、ジャマイカの厳しい現実が登場人物をのみこんでいくのだった。
著者のガーフィールド・エリスは、1960年セント・キャサリンのセントラル・ビレッジ生まれ。
そこはギャング抗争のある地域でもある。
ちょうど今日、セントラル・ビレッジの抗争で3人の息子を失った女性の話がグリーナーに掲載されていた。
この本はあくまでフィクションだが、力のない人たちが住むコミュニティーで、どんなに個人がまっとうに生きようとしても、政治や、その他様々なものに巻き込まれないようにするのが大変かが描かれている。
そして懸命にまっとうさを求めても逃れられないコミュニティー内の重圧、それに疑問もなく屈していく若者の悲しさがものすごい切迫感を持っている。
いくら「これは創作だから」と言い聞かせても、本の世界が現実のように思わされてしまうのだ。
そしてその現実は重い。
この本の素晴らしいところは、くったくのないジャマイカの少年時代と重いジャマイカのリアリティーを、光と影のように対比さているところ。
おなじように学校をサボり、川に行き、親からしかられることだけを心配していた少年5人は、それぞれ夢を持っていた。
兵隊、エンジニア。。。 主人公はベンツに乗るのが夢だった。
すると仲間は言う、「ベンツはお金持ちが乗るもんだぞ」「ベンツに乗るなんて、何の仕事するんだ?」
― 弁護士だよ。 そう答えた主人公は、「お前の夢はデカすぎる」と笑われてしまう。
しかし主人公はまじめに勉強し、犯罪や政治に関わらず学校を卒業すれば、弁護士とはいわずとも、まっとうな(ここではホワイト・カラーの)仕事に就けると信じていた。大人になる前は。
そしてジャマイカのこどもたちが大人になるのは早い。
著者は主人公と同じような経歴をたどって、現在はオブザーバー社のオペレーション・マネージャーをしている。
執筆活動も精力的で、今日紹介した『 Nothing At All 』は3作目。ほかに短編集の『 Flaming Hearts and Other Stories 』(1996、National Book Development Council of Jamaica)、『 Such As I Have 』(2003、マクミラン)がある。彼の才能はユナ・マーソン賞を受賞していることで実証済み。
とても読みやすい本だけに、どうしてこんなにも細かいプロットが書ける?と言いたくなる。
実際にジャマイカの若者がおかれた状況と重ねながら読んでしまうのは、わたしだけではないはずだ。
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2007年1月20日
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