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    「 Ruffn' Tuff
      ジャマイカン・ミュージックの創造者たち 」

監修: 石井“EC”志津男
2006年 リットーミュージック   



「語られたまま」であるからこそ、ジャマイカ音楽の力や魅力を再確認できる


 「 人はどうして、人の話を聞くのが好きなのか」 と思うことがある。 こちらがたずねてもいないのに切々と語られる場合もあれば、こちらからたずねて聞かせてもらえる話もある。 途中集中力がきれて 「 そう、そう 」 とあいまいにあいづちをうったり、興味のないことは適当に流しながら耳を傾けることもある。 いずれにしてもほとんどの場合において、じぶんに必要なものが偶然語られているのはとても不思議だ。 無意識の内に求めているものを与えられていることに、話を聞きながら気づく。



 今日ご紹介する 『 ラフン・タフ 』 は、同名のドキュメンタリー映画に収めきれなかった語りを収録した書籍版。 題名からもわかるように、ジャマイカ(ポピュラー/録音)音楽を創造した、重要なミュージシャンたちの証言集である。
 ジャマイカのポピュラー音楽に関する情報は、音源、雑誌記事、書籍、映像なども合わせて膨大にある。 もちろんすぐれた記録や語りもあるのだが、それを記録する側がジャマイカ人でないことが原因なのか、あまりにも事実を早急に伝えようとするあまり、実際の立役者たちに直接取材をしていても、伝える側の記録方法が「大事ななにか」を割愛しがちだったことを感じている受け手もいるのではないだろうか。
逆に「大事ななにかを伝えたい!」と焦るあまり、話者が語り部から記録者にすり変わっていることも多々ある。
 これだけいろんなかたちで情報が出回っている今、そろそろ「語られていないもの」を伝えてくれる語り部が欲しかったことは、受け手の本音である。 そしてその「大事ななにか」と「語られていないもの」を、ジャマイカ(ポピュラー/録音)音楽を創造した、重要なミュージシャンたちの語りをそのまま記録することでわたしたちに伝えてくれるのが 『 ラフン・タフ 』 である。



 初期の録音音楽の創造に関わったグラッドストン・アンダーソン、リン・テイト、ジョニー・ムーア。 サウンド・システム抗争時代を経て新たな流れを作ったプリンス・バスター。 素晴らしい名曲をたくさん歌っているミスター・ロック・ステディ、アルトン・エリス。 ストレンジャー・コール、ダディ・U・ロイ、そしてロック・ステディ期から活躍するカールトン・マニング、リロイ・シブルズ、ジョン・ホルト、ボブ・アンディ。 テクニークスのウィンストン・ライリーは、さすが50年近く変容するジャマイカ音楽とともに変化をしてきた作り手だけに、バランスのいい語り部。 そしてダンスホールのイエローマンへと続いていく。
 『 ラフン・タフ 』 の映画やこの本を読んで、 「 結局スカとロックステディは誰が作ったんだ? 」 と野暮なことを言う人もいるようだが、わたしはウィンストン・ライリーの言うように、複数のスタジオやレーベルで同時に音楽を作っていた状況で、はっきりと 「 誰が作ったと個々の名前をあげることは不可能 」 だと感じているリスナーの一人である。 ただスカやロックステディという新しい音楽の創造に、この本(映画)に出てくるミュージシャンが関わっていたことは想像に難くない。 そしてこの本(映画)が持つほんとうの力は、スカやロックステディを誰が作ったかをつきとめたことではなく、 「 源流をさぐった 」 ことにあるのではないか。貴重な証言も多い。  本書の冒頭で石井氏が 「 インタビューを行なうために、個々のアーチストに質問を用意していったわけではない 」 と語っているが、質問など用意していなくても、事前にアーチスト資料を当たっていなくても、この記録に携わった人たちは、それが不要なくらいジャマイカ音楽に深く関わっている人たちなのだ。 彼らだから聞けた話、雰囲気が、映画にも本にも出ている。



 ジャマイカ音楽の持つ魅力は、「○○年に××を作った」という記録を見てもわからない。 それがどんな風に作られたのかという話を聞くことで再確認できるのであり、その語りが 『 ラフン・タフ 』 の映画や、本にはあふれている。 そして、それは今のわたし(たち)に必要な語りなのだと思う。 いつまで聞いていても飽くことがない。
 石井氏やソニー落合氏 (そして日本語訳や編集に携わった高橋瑞穂氏もおそらく) が感じているように、誰かが記録をしなければ語り部たちがいなくなってしまうという危惧は、今も残っている。 その記録のすべてを、彼らや誰かに頼りきることはできないが、このように語られたままのかたちで触れることができるのは、とてもしあわせだ。 「 語られたまま 」であるからこそ、ジャマイカ音楽の力や魅力を再確認できるのだから。  それをわかっている 『 ラフン・タフ 』 記録者たちの功績は大きい。ジャマイカ音楽を愛し、長年携わっている彼らだからこそできたドキュメントである。

2007年6月9日 森本幸代

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