それでは最後にポートローヤル開発会社のまとめた、ポートローヤル遺産観光プロジェクトの資料をご紹介したい。
ポートローヤルは映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」にも登場した(注: 撮影は別の国で行われた)キングストン南部に位置する。
17世紀には「世界で最も豊か、最も墜落した町」と呼ばれ、数多くの奴隷船や海賊達が寄航して栄えた。
1692年の大地震で町の半分以上が海の下にに沈んでしまったことでも有名。
その歴史あるポートローヤルをいかに観光材料として開発するかということが、細かく調査・検討されたのが1998年5月の資料。
今後観光開発を行う上で、どのような点に留意すべきかが非常にわかりやすく書かれている。
以下レポートからの抜粋。
コミュニティー、国、一般企業と協力した歴史・文化観光開発
■ 開発の利点:
1、地元、および周辺地域住民の生活水準向上
→ 開発によって働き口が増える。ビジネスの機会が増える。
よって失業率の低下、犯罪率の低下にもつながる
2、地元、および周辺地域住民の人的資源開発、能力の向上
→ 開発に伴う職業訓練、技術習得トレーニング。
教育に対する関心も高まる。
■ 課題点:
1、 周辺地域からの人の流入
→ 職を求めて。もしくは観光に伴う犯罪に関わって。
2、地元、周辺地域の不法住居者
→ 既存の不法居住者は観光地の秩序維持を困難にし、新たに
やってくるくる人たちを受け入れられるだけの雇用・
居住地がないため、問題の悪化する可能性がある。
3、 観光客に対する嫌がらせ
→ 麻薬、売春、強盗など
4、地元、観光客(観光業者)間の価値観の相違
■ 課題克服のための提案。
1、適切な計画、導入、観察体制。
→ 企画段階からコミュニティーが積極的に参加する。
既存のビジネス、コミュニティーのあり方を大事にする。
観光業が住民の日常生活をおびやかさないように。
特にこどもにとってよい環境を維持するため、学校、
教会、地元の施設は観光エリア(バーやアトラクション)
から切り離されていること。
2、長期的な影響を考慮したプラン
ここ20年あまり、カリブの経済は停滞しているにも関わらず、観光業だけは世界的需要もあって伸び続けている。(注: SARS、9・11のあった2001年、2002年は除く)
規模も文化も環境も違う各地で、今後どのような観光開発を行うかが成功の鍵なのだ。
ジャマイカはカリブでも観光客の多い国だが、他の国に先駆けて数多くのオール・インクルーシブ・ホテルを建設したことが大きく起因している。
ジャマイカを訪れる観光客の66%がアメリカ人、継いでカナダ、イギリス、ヨーロッパなどを占める現状において、それらの国の経済が不調な時に比較的高価な(豪華さが売りではあるのだが)オール・インクルーシブが
観光業の中心をにない続けられるかというのも大きな疑問だし、オール・インクルーシブのあり方自体も問われている。
“美しい海、常夏の島”というステレオタイプなイメージと、植民地時代的なホスピタリティーを売りにして、ジャマイカ社会から隔離されたこの種のホテルが、
地元のコミュニティーに貢献しているとは、心理的にも言い難い。
つまり世界的に観光業の需要が高まっているときだからこそ、観光開発の新しいあり方が問われているのではないのか。
モンテゴベイもネグリルも、他の町が「ああなりたくない」という例として挙げられるその陰に、オール・インクルーシブの姿があることは否定できないだろう。
そんな中ポートローヤルやトレジャービーチのような町が、これまでの教訓を胸に慎重なコミュニティー主体の観光開発を目指しているのは新しい希望のように感じる。
わたしもかつて日本の観光地で働いていた者として、外部の人に話すと必ず驚かれることがある。
「なんでそんな仕事を?」とか「何でそんなに給料が安いの?」ということだ。
多少労働条件が悪くても、他に働き場所がなければ「Tourists are ugly. (ジャマイカ・キンケイド「小さな場所」より)」と思いながら働くしかない。
巨大ホテルの陰で日当たりを全く失い、酔っ払いの騒ぎ声が夜中まで聞こえてきても、仕事場確保のため文句も言えない。
高いのはお土産ものと飲食代だけ。飲み屋とホテル、お土産物屋はどんどんできても、近くにス―パーができるわけでも、映画館や図書館ができるわけでもない。
勤務用の乗合バスとホテルの送迎車が走る代わりに路線バスは廃止され、自転車通勤すれば美観を損ねると撤去される。
地元の風呂屋は壊され、豪華ホテルの中に作られる温泉。
こうしてたまりゆく静かなうっぷんは、はけ口もなく観光客に対する嫌悪感に変わる。
しかしそんな場所で働いているのも、わたしたち住民自身なのだ。
コミュニティー・ツーリズムは新たな光。
オール・インクルーシブやリゾートホテルも観光客の需要に応えながら、新たな方向性を探っていって欲しい。
== 参考資料 ==
Caribbean Regional Human Resource:
Development Program for Economic Competitiveness
Country Studies: Tourism
世界観光倫理コード
「The 2004 Travel & Tourism Economic Research」
World Travel and Tourism Council
3/3
2004年7月29日 Mighty Mules' Bookstore
(2006年12月13日再掲載)